第三部:推拿は、中庸の王道にいる〜施術者、利用者として何を選ぶか〜
第三部:推拿は、中庸の王道にいる
〜施術者、利用者として何を選ぶか〜
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あなたは「マッサージ」に何を求めていますか?
——リラクゼーションを問い直す(全三部)
第一部:リラクゼーションとは何か?
第二部:現場で何が起きているか?
第三部:施術者、利用者として何を選ぶか? ←今ここ
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前回(第二部)では、
志ある施術者が現場で何に直面しているかをお話ししました。
最終部となる今回は、
「本来の施術とは何か」を問い直し、
その上で、
施術者として——そして利用者として——
私たちが何を選び取っていくのかを考えます。
本来、施術とは何か
ここで、
利用者の方にも、施術者の方にも、
改めて問いかけたいことがあります。
リラクゼーションマッサージとは、
外から刺激を加えて、
感覚的に気持ち良くする——そういうものではない、
ということです。
では、本来のリラクゼーションとは何か?
それは「与えられる」ものではありません。
外から強い刺激を足していく施術は、
その場では満足を生みます。
しかし、
施術が終われば、身体は元の状態へ戻っていく。
なぜなら、内側が何も変わっていないからです。
推拿が行うのは、
足すことではなく、取り除くことです。
滞りを通し、詰まりをほどき、無意識の緊張を解いていく。
引き算によって、身体を本来の状態へ戻していく。
整った身体は、ひとりでに力を抜きます。
自律神経のバランスが戻り、血流がめぐり、呼吸が深くなる。
その結果として、深い「解放」が訪れる。
これが、
本来の「リラクゼーション」だと私は考えます。
第二部でお話しした薬学部の受講生が、
施術講義のあとに
「止まっていた生理が戻った」
と報告してくれたのも、まさにこれです。
強い刺激で「気持ち良くさせた」のではありません。
詰まっていた背中に、
必要なだけの「浸透」を届けた結果、
彼女の身体が、自分で反応を取り戻したのです。
解放=リラクゼーションとは、
与えるものではなく、内側から起きるものです。
その中央にプロがいますか?
では、なぜ現状のリラクゼーションマッサージは、
「与える刺激」ばかりになってしまうのでしょうか。
ここで、量販型の飲食チェーン店を例に考えてみます。
ファストフードやファミリーレストランは、
全国どこでも同じ品質のものを、
安価に大量に提供しています。
サイゼリヤの厨房には包丁がなく、
一人のアルバイトでキッチンを回せる、
という話を聞いたことがあります。
それでもクレームは出ません。
利用者は満足して、対価を払い続けています。
なぜ品質が保たれるのか。
組織の中央に、調理のプロがいるからです。
セントラルキッチンで、
専門家が開発し、定量化したものを、
各店舗が再現している。
中央に「専門家の手と知識」があるから、
末端のアルバイトが作っても、
平均された質が保たれるのです。
では——
リラクゼーションマッサージ業界の「中央」には、
プロがいるでしょうか?
近年のリラクゼーションマッサージは、
あん摩・マッサージ・指圧の系統を、
法律に抵触しない範囲で均一化・画一化し、
量産することで普及してきました。
そこにニーズがあったことも事実です。
もちろん、すべてがそうだとは言いません。
中央に優れた指導者を置く事業者もあるでしょう。
しかし飲食チェーンと決定的に違うのは、
その「中央」に据えられているものが、
多くの場合「技術の深さ」ではなく、
「誰でも短時間で真似できる手順」だということです。
再現しやすさそのものが目的になったとき、
画一化されるのは手順だけで、
技術そのものは空洞のまま量産されていきます。
医療行為・治療行為からは距離を置き、
グレーゾーンよりも安全な、
独自の「オフホワイトゾーン」をつくって権威化する。
しかしそれは外壁だけの見せかけで、
中身は空洞のまま肥大し、
すでに衰退を始めているのではないか。
これは、業界の外にいる私の妄想ではありません。
医療業界の中からも、
リラクゼーション業界の中からも、
悲鳴のように上がってくる声を、
汲み上げてお伝えしています。
利用者として、施術者として、
あなたは何を選び続けますか
私のいる「日本人が継承する推拿」の立ち位置は、
あはき(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう)の医療業界からも、
リラクゼーションマッサージ業界からも距離を置かれた、
グレーゾーンの谷間にいます。
そんな私に、
あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持つ何人かの方が、
こう言ってくれたことがあります。
「日本の徒手療法の世界を、底上げしてください」と。
なぜ、資格を持つ人がそう言うのか?
国家資格を取るための専門学校でさえ、
授業は国試対策のカリキュラムで埋まり、
教育課程の中で手技の技術を習得することは難しいそうです。
実際、
ある指圧学校出身の施術者を数年間指導したことがありますが、
彼は当初、拇指圧をかけることができませんでした。
そして、
「鍼灸やあん摩マッサージ指圧では生計が立てられない」
という声も多く、
「治療では食べていけない」
とリラクゼーションマッサージ店で働く
有資格者も少なくありません。
その現場では、技術ではなく、
ルックスやトークで売上が決まる構造ができあがっている、
という話も数多く聞いてきました。
利用者のニーズに応えられているならいい——
しかし私は、
その「ニーズの質」自体が、
「マッサージ」への認識ごと低下していると感じています。
「サービスの質」と「ニーズの質」。
その両方の低下が、
「マッサージ」という言葉を、そして手技そのものを、
ひどく安く、一時凌ぎのもの
という低い認識、価値にしてしまっている。
私はそこに、強い危機感を持っています。
マッサージは、人を堕落させるのか⁈
もう一方の、医療業界はどうでしょうか?
受講生に、
作業療法士として訪問リハビリの現場で働く方がいます。
作業療法士は、基本的に医師の指示のもとで働きます。
彼女の勤め先と関係する整形外科医は、
「マッサージ禁止」という指示を出しているそうです。
理由は、「マッサージは人を堕落させるから」。
その医師の真意はわかりません。
しかし彼女から伝わってくるのは、
徒手療法への認識の低さです。
「マッサージは気持ち良くするもの」
だから
「利用者が起き上がらなくなる」「歩かなくなる」
——そういう論理だといいます。
私の考えは違います。
中国では、
推拿は医療として採用され、
鍼灸とともに病院で行われています。
膝や腰の痛みの多くは、
初期のうちは主に軟部組織の拘縮によるものです。
関節内部の変形そのものには対応できませんが、
筋肉と靭帯を整えることで、
痛みや動きは改善される。
それを前提に施術が行われ、
実際に、人間の身体はそれで機能します。
さらに、
気血の巡りが改善することで、
活動への意欲までもが生まれる。
そこまで含めて適応する——それが中医学の理論です。
「手で触れて状態を把握し、異常があれば手技で改善する」
本来は当たり前であるはずのこの営みを、
日本では「エビデンスがない」の一言で遠ざけてきました。
近年ようやく、
筋膜リリースやハイドロリリースという形で、
軟部組織へのアプローチの重要性が注目され始めています。
推拿が古くから実践してきたことに、
別の名前で光が当たり始めたにすぎません。
それぞれの医学に、
異なる歴史と強みがあります。
優劣の話ではありません。
ただ、現状の日本の医療は、
その恩恵の大きさと引き換えに、硬直してもいる。
「手で触れて整える」
という当たり前さえ排除したまま、
利用者・消費者・国民に不利益が及んでいるのだとしたら
——そこは、見直されるべきだと私は思うのです。
まとめ
長くなりました。
最後に、
この連載でお伝えしたかったことを一つにまとめます。
「マッサージ」は、医療業界に握られています。
「リラクゼーション」は、商業主義団体が握りました。
もしあなたが今、
そのどちらからも得られない
「サービス」「技術」「改善」を探しているのなら——
推拿は、その中庸の、王道にいます。
ぜひ、推拿の道に入ってきてください。
(全三部・完)
すいな健康院 からだの調律整体 推拿の信長 信長正義
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