第二部:『肘を伸ばし体重を載せて押す』〜教え易く、真似しやすいが手指や身体を酷使する安易で稚拙な技術〜
第二部:『肘を伸ばして体重を載せて押す⁈』
〜志を持って施術者になろうとした人が、現場で教わる稚拙な技術〜
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あなたは「マッサージ」に何を求めていますか?
(全三部)
第一部:リラクゼーションとは何か?
第二部:現場で何が起きているか? ←今ここ
第三部:施術者として、患者として何を選ぶか?
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前回(第一部)では、
「リラクゼーション」という言葉の
本来の意味を問い直しました。
今回は、その言葉が使われている「現場」で、
実際に何が起きているのかをお話しします。
「肘を伸ばして体重をしっかり載せて押す」
〜志を持って施術者になろうとした人が、現場で教わる稚拙な技術〜
私の推拿講座の受講生は、
気がつけば現状では医療関係の
有国家資格者の女性がほとんどです。
志を持って難関をくぐった
鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師、
作業療法士、そして看護師の方々。
そんな彼女たちが、
医療の現場でご本人たちが直面し続ける、
それぞれの「国家資格」の範疇で定められた
業務の中では賄いきれない課題を、
必死に果たそうとして探した結果、
「推拿」にたどり着いている現状です。
そんな中、
6年制の薬学部の学生が、
「西洋薬だけですべての患者を改善することは出来ない」
という現実に気づき、
漢方薬や薬膳などの勉強を進めるうちに
「推拿」にたどり着き、
薬剤師としての貢献にプラスして
手技で直に患者に対応できる自己実現を掲げて、
私の元へいらっしゃっています。
几帳面で真面目な彼女は、
アルバイト自体も施術に関連することにするために、
とあるリラクゼーションマッサージ店に応募して、
研修を受けた後すぐに働き始めることにしました。
施術のバイトを始めたのは、
推拿の講座の受講を決めるのと
ほぼ同時進行の時期だったのですが、
1回目の受講後の翌月に、
あんなに意欲の高かった彼女から
「親指と手首を傷めたので今月はお休みにしたい」
との連絡が入りました。
アルバイトの施術で現場に立ってからすぐのことです。
その後、
翌月以降に分かったのですが、
「肘を伸ばして体重をしっかり載せて押す」という、
長年、推拿一筋できた今の私からは考えられない、
技術のない稚拙な「やり方」を当然のように教えられて、
即、現場に出されているのです。
「肘を伸ばして体重をしっかり載せて押す」
これは、
どの現場でも当たり前のように施されています。
理学療法士の資格を持つプロスポーツトレーナーから
「この選手は身体が大きいから
十分体重をかけて力を入れて押してね!」
という指導を受けたという事実を、
作業療法士で鍼灸師の受講生から聞いたことがあります。
この受講生はすでに
推拿の「按法」を修得していたので、
体重で押さない推拿の拇指按法で選手に施術したそうですが、
この体格の良い選手から充分に効果的な反応を得ました。
さらに、この時の施術者に
中国の「中医薬大学」で推拿を学んだ
身体の大きい中華系アメリカ人男性がいたそうですが、
やはり「体重押し」で汗をかきながら施術していた
という話も聞きました。
もうひとつ、
私も師匠(孫 維良先生)に連れられて
「中医薬大学附属病院」を見学させてもらったことがあり、
入院病棟での若い推拿師の施術を目の前で見る機会を得ました。
ここでの彼らが
「肘を伸ばして踵を浮かして、体重を患者の身体に載せて押す」
施術をしていたので、目を疑いました。
師匠が継承した伝統推拿は、
中国の大学制度の中でも正確に伝えられていないのか
——今でも忘れられない光景です。
私の推察ですが、
孫 維良先生のような、
徒弟制度で先代から直接、
伝統推拿を受け継いだ優秀な世代が、
1980年代後半から海外へ流出した
事実があるからかも知れません。
実は、
これも受講生から聞いた話ですが、
鍼灸あん摩マッサージの専門学校の伝統校でさえ、
国試対策のため、
徒手療法の技術習得時間は
非常に短時間しか設定されておらず、
伝統的な「按摩」を指導する先生は人気がなく、
「体重押し」を指導する先生に生徒は群がるそうです。
伝統手法は「わかりづらく」「習得しづらい」。
体重押しは「わかりやすく」「すぐできる」からです。
「肘を伸ばして体重を載せて押す」
この「やり方」は、
「教えやすく」「真似しやすい」のです。
だから多くの施術量販店は、
この「やり方」で即、現場に出せるのです。
そしてその現場で、
志のある施術者が
働くために教わることになります。
利益が優先されるとき、施術者は道具になる。
先ほどお話しした薬学部の学生は、
その後も困難に見舞われ続けることになります。
初受講の後すぐに親指と手首を傷めて推拿講座をお休みして、
2回目の受講は2ヶ月後になりました。
この時は痛みは少し和らいでいましたが、
なるべく拇指と手首を使わない手技の
習得時間としたのですが、
初回に伝えた基本手技の練習も
かなりしていたのがわかるほど上達が見え、
面談にいらした当初の意欲は
少しも衰えていないのが感じられ、
非常に驚き喜んだ自分がいました。
誰にも真似のできない志ではありましたが、
薬剤師の国家資格をとって就職してしまえば、
何もそんな苦労をしなくても
悠々自適な将来が見えているタイプの若者だと思っていたので、
過酷な施術の世界に触れて挫折するかもしれない、
そんな危惧を勝手に持っていたからです。
しかし、
その翌月は大学の事情を理由に受講はお休みになり、
3回目の受講は約1ヶ月半後になりました。
それでも受講日を自ら設定して、
約束通り受講にいらしたのですが、
近況をお聞きした後に講座内容に入ると、
不意に涙を流し泣き始めたので、
さすがの私も冷静さを取り戻そうと座り直し、
涙の理由をじっくり伺うことにしました。
その理由の大半は、
アルバイト先の施術を通しての
「手技」に対する悩みでした。
・「強めに押して!」という要望に応え続けなければいけない
・一旦出勤すると、詰め込み式に施術機会が回ってくるのに抗えない
・従業員の愚痴などのマイナスオーラで疲弊してしまう
そのため、
指や手首の疲労が蓄積してしまうので、
出勤日を減らしたり、一日の稼働時間を短くしている。
つまり、
自分が思い描いている施術の理想は崩れ、
身に付けたいと思っている技術が思うように身につかない。
それで、
私が推拿手技の技術の手前に必要だと考える
「氣の鍛錬」の最中に、
「氣のことがわからない…」
と悲しくなったようでした。
その段階ではまだ、わからなくて当然のことなのですが。
しかし、
何故か日頃の現状から
「自分は劣っている?」
という疑念が生まれていたのかは定かではないですが、
自己肯定感が下がっていたのは確かで、
あんなに高く清らかだった理想、志に、
自信が全く持てなくなっていたようです。
そのため、
不眠や生理不順を起こして、
精神も体調も非常に不安定な状態だったようでした。
そんな状態でも、
片道2時間近くもかけて、
その日の講座に約束通り来ている。
意欲と心身がマッチできない
苦しい想いを、真剣にしていました。
その後、
その日は「按法」の理解のための講義を始めていて、
初めは「拇指按法」の力、腕力、握力、
体重で押さない理解を伝え始める時間にしていました。
実際に、
身体の押しやすい部分から始めて、
背中の膀胱経を拇指圧で按する手法を伝え始めた時、
彼女の背中があまりにも「詰まっている」ことに気づきました。
後ですぐに私の施術が復習できるように
動画で撮影をしながら、
伏臥位での背部の施術だったのですが、
手法を伝えるのを超えて、
やや膀胱経の滞りを通す施術を施すことになりました。
その際に、「拇指按法」だけでなく、
「肘按法」も先取りして使うことにしたのですが、
その時の彼女はやや警戒心をだして
「わっ、痛くなるかもしれない」と反応しました。
後で彼女にも、
アルバイト施術でやっている「肘押し」を
私の背中にやってもらいましたが、
そのうちにベッドの上に乗って身体を預け、
体重を載せるような「肘押し」を始めたのです。
「みんなこうやってます」
私が彼女の背中に
「肘」で施術をしようとした時に
警戒心を示したのは、
この「体重全載せ肘押し」を想定したからで、
「キツイ」「強押し」が始まる!
と警戒したのだと思います。
しかし、
もちろん推拿の「肘按法」は体重など載せず、
おそらく力の20%を使っているかどうかくらいで、
「筋膜、筋線維の状態と層の段階を肘先で診る」
という内容の手技です。
強く押そうとすればまだ80%も余力がありますが、
患部に対して必要なだけの「浸透」をすれば良い、
というのが推拿の概念です。
しかし、
その技術内容を理解するのは、
そんなに容易くないのだと思います。
その「按法」の施術講義の後、
彼女から、
以前のような快活なLINEが届きました。
「あの後、止まっていた生理が始まりました」
という体調改善の報告です。
このことによって、
彼女が講座の中、その背中で感じた
—— 拇指でも肘でも、
ほどよい「痛気持ちいい」くらいの
浸透をコントロールしながら施す「按法」——
その理解と興味が深まったことは、間違いないと感じています。
「体重押し」に慣れた身体ほど、
思考を変え、技術を変えるのに、時間がかかります。
しかし、だからこそ価値がある。
その価値は、
得た者に末長い「理」と「利」をもたらす——
私はそう信じて、志ある受講生と向き合い続けています。
では、その「向き合い」の先で、施術者は何を選び取っていくのか。
最終部で、そのことをお話しします。
👉 ✅ 第三部「施術者として、利用者として何を選ぶか?」
へ続きます。
すいな健康院 からだの調律整体 推拿の信長 信長正義
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