🌿第16回|経絡の巡行 ― 十二経脈の流れをたどる
🌿第16回|経絡の巡行 ― 十二経脈の流れをたどる
【概要】
経絡学説における「巡行(じゅんこう)」とは、経絡が身体のどこをどのように通り、どの臓腑とつながっているのかを示す重要な要素です。
経絡の流れは、体の表面だけでなく、内臓を通り、手足や頭部までを結び、まるで全身をめぐる「生命の地図」のようなもの。
この流れを理解することは、推拿や鍼灸の施術において“なぜその部位を刺激するのか”を知る基礎になります。
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【要点】
•経絡は体の表面と内部をつなぐ「気血の通路」。
•十二経脈は、胸腹から四肢末端・頭部へと流れ、陰陽が交互に循環する。
•各経脈は、それぞれ特定の臓腑と対応している。
•経絡の流れをたどることで、臓腑の異常が体表に現れる“反応点”が理解できる。
•推拿や鍼灸では、この流れを利用して遠隔部から臓腑に働きかける。
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【本文】
💫 経絡の流れの全体像
経絡は「内から外へ」「上から下へ」「表から裏へ」と循環しています。
具体的には、手の太陰肺経から始まり、足の厥陰肝経で一巡して再び肺経に戻ります。
この循環の中で、気血は絶えず体をめぐり、臓腑と四肢・頭部・体表を連絡しています。
推拿においても、経絡の方向に沿って施術を行うことが、気血の流れを回復させる基本です。
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⚙️ 十二経脈の主な巡行部位と特徴
① 手の太陰肺経
中焦に起こり、大腸に下りて連絡し、横隔膜を通って肺に属する。
喉頭部に上がって中府穴に至り、腕の内側前面を通って少商穴まで流れる。列缺穴から分かれ出て商陽穴に至り、手の陽明大腸経とつながる。
呼吸や皮膚の働きと深く関係し、肺の不調時には前腕内側や鎖骨下に違和感が現れやすいです。
② 手の陽明大腸経
商陽穴から始まり、腕の外側を上がって肩関節の前縁の肩髃穴から巨骨穴付近に至った後、背骨沿いに上り大椎穴で他経と交わり、鎖骨上窩の缺盆穴から胸腔内へと入り肺に絡む。さらに横隔膜を通過して下行し、最終的に大腸に属する。
この流れが、大腸の排泄機能や、表裏関係にある肺の呼吸機能といった生命維持に不可欠な働きを根本的に調整する。
分枝は体表の巡行であり、鎖骨上窩から
この分枝が、顔面、鼻、口、歯、咽喉などの感覚器や皮膚に気血を供給し、これらの局所的な症状、鼻づまり、歯痛、顔面痛などの症状改善点となる。
“番外編”【手の陽明大腸経の巡行経路の疑問について】〜AIとの問答集〜
“番外編”【手の陽明大腸経 → 足の陽明胃経へつながる巡行の理解】〜AIとの問答集〜
③ 足の陽明胃経
迎香穴から始まり、上方へ向かって鼻根部に至り左右の経絡が交わり、足の太陽膀胱経の晴明穴とも交わり、眼窩下縁(黒目の真下)の承泣穴に至り四白穴、巨髎穴と経由し下行。上歯茎の中に入り込み再び出て口唇を挟むように巡り、下顎へと下り、督脈の水溝穴(人中)で交会し地倉穴を経由し、顎(オトガイ)唇溝の承漿穴(任脈)で左右が交わり、大迎穴に至り上行と下行に分かれる。上行は下顎角の頬車穴に向かい耳の前方を通り頭髪際に沿い額の頭維穴に至る。
下行の巡行は、大迎穴から前方に下行して人迎穴に至り、気管に沿って後ろに下行し、大椎穴(督脈)を通り缺盆穴に至る。ここで体腔に入り横隔膜を通り下行し、胃に属して脾に連絡する。さらに胃の下口の幽門から分かれ出て、腹腔内に沿って鼠蹊部の気衝穴に合流。
直行脈は、缺盆穴から体表に出て、乳頭部を通り下行し、臍の外側二寸を通り気衝穴に至る。
大腿前側を下行し膝蓋に至り、脛骨前縁に沿って下行して足の甲に至り、厲兌(れいだ)穴(第二趾外側端)に入る。
分枝は足三里穴から分かれ出て第三趾外側端に入る。さらに分枝が、足の甲の衝陽穴から分かれ出て隠白穴(第一趾内側端)に入り足の太陰脾経とつながる。
食欲や消化器、口腔・眼の症状と関係します。
④ 足の太陰脾経
足の第一趾内側端(隠白穴)から起こり、脚の内側を上行して腹部に入り、脾に属して胃に絡まる。
上行する脈は食道の脇を通り、舌の下に広がって終わる。
さらに分枝の一つは胃から出て横隔膜を上行し、心中に入り手の少陰心経とつながる。
消化吸収、血液循環、そして四肢の力に関係し、脾虚の際には脚の内側が重だるく感じられることがあります。
“番外編”【足の太陰脾経の巡行と「舌下」「心への分枝」についての問答】
⑤ 手の少陰心経
心中から下行して小腸に絡す。
分枝は食道を挟んで上行し目系につながる。
直行する脈は、心臓から始まり、腕の内側を通って小指(少衝穴)に至り
手の太陽小腸系につながる。
心臓と精神活動をつかさどり、動悸、不眠、情緒不安などと関係します。
⑥ 手の太陽小腸経
小指から腕の外側を上り、肩・首・耳の周囲を通り、目の外側に終わります。
首・肩こり、耳鳴り、顎関節の不調などに関わります。
⑦ 足の太陽膀胱経
目の内側から頭頂・背中・腰・脚の後面を通り、小指の先に至る最長経脈です。
背部痛や腰痛、肩甲骨周囲のこりなどに関係します。
背中にある膀胱経の経穴は「背俞穴(はいゆけつ)」と呼ばれ、各臓腑に対応しています。
⑧ 足の少陰腎経
足の裏から内側を通り、脊柱を経て腎に入り、さらに胸・喉・舌根へとつながります。
腎のエネルギー(生命の根)を保ち、生殖・成長・老化に深く関わる経絡です。
⑨ 手の厥陰心包経
胸中から始まり、腕の内側を通って中指の先に達します。
心臓を保護し、精神の安定・血液循環に関係します。
⑩ 手の少陽三焦経
薬指から始まり、腕の外側を上がって耳の周囲・側頭部へ。
身体の「水分代謝」をつかさどり、むくみ・耳鳴り・目の疲れなどに関連します。
⑪ 足の少陽胆経
目の外側から頭部・体側・脚の外側を通り、足の四趾に至ります。
胆のうと肝の気の流れを助け、決断力やストレス反応に関わります。
⑫ 足の厥陰肝経
足の大趾から始まり、脚の内側を通って肝・胆に入り、胸・喉へと上行します。
全身の気の巡りを調整し、情緒のバランスに大きく関わる経絡です。
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🌀 十二経脈の循環関係
これら十二経脈は、
•手の太陰肺経 → 手の陽明大腸経 → 足の陽明胃経 → 足の太陰脾経 → 手の少陰心経 → 手の太陽小腸経 → 足の太陽膀胱経 → 足の少陰腎経 → 手の厥陰心包経 → 手の少陽三焦経 → 足の少陽胆経 → 足の厥陰肝経 → 再び肺経へ戻る
という順序で、絶え間なく体をめぐります。
これは、気血の流れを絶やさず、体内外の陰陽バランスを保つための自然な循環システムです。
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🌿 推拿との関連
推拿では、患者の症状に応じてこの経絡の流れを読み取り、滞りのある部位を開放していきます。
たとえば腰痛では膀胱経、頭痛では胆経、胃の不調では脾経や胃経を整えるなど、経絡の通路を意識した施術が重要です。
流れを回復させることで、臓腑と体表、心と体の調和が自然に戻っていきます。
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【まとめ】
経絡の巡行を理解することは、中医学を「線」としてとらえる第一歩です。
人の身体は単なる部分の集合ではなく、気血が全身をめぐる一つの有機的な生命体。
推拿の施術者は、この流れを“指先で感じる”ことが求められます。
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【出典・参考】
出典:『全訳 中医基礎理論』(たにぐち書店)
監修:すいな健康院 推拿療法 天と地と人
※本記事は教育・啓発を目的とした一般向け解説です。
※経絡図
針灸指圧自然堂さんより引用利用させていただきました。
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📄次回(第17回)は「奇経八脈」について解説いたします。
本稿とつながる内容ですので、ぜひ続けてお読みください。
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