手を水のように——腹部按揉法が届く場所
「人間の身体はほとんどが水でできているのだから、
自分の手も水のようにならなくてはならない」
これは、私の師匠・孫維良先生の言葉です。
かつてブルース・リーもインタビューの中でこう言いました。
「Be water, my friend.」
容れ物に従い、どんな形にもなる。
流れ、浸透し、しかし確かに存在する。
腹部按揉法(ふくぶあんじゅうほう)
という手技を施すとき、
私はいつもこの言葉を思い出します。
「静」の後の「動」
以前、
腹部推拿の「腹部按法」についてお伝えしました。
掌をお腹に置き、静止する。
施術者の穏やかな気を患者さんに伝え、
上がった気を下げ、
副交感神経を優位に導く——「静」の手技です。
腹部按揉法は、
その「静」の後に行う「動」の手技です。
腹部按法で気が下げ、
胃腸の動きが促されはじめた状態に、
さらに働きかける。
胃腸の蠕動運動をより深く促進し、
内臓の状態を整えていきます。
つまり、
自律神経のバランスを調律することになるのです。
力で押し込まない
お腹はデリケートな部位です。
そして腹部按法で副交感神経が優位になった後の身体は、
さらに繊細な状態にあります。
ここで力を入れた施術を行えば、
患者さんの身体は抵抗を起こします。
それでは元も子もない。
腹部按揉法では、
「力」ではなく「腕の重さ」で手を沈めます。
つまり、
術者は完全にリラックスした状態でなくては
この手技を全うに施すことはできません。
沈んで浸透して揉んで動いていますが、
力んではいません。
術者の気が落ち着いていないと、
手は沈まない。
「力で押し込んでいない」から、
身体は抵抗しない。
抵抗しないから、手は深部へ届く。
水になること
孫維良先生の言葉に戻ります。
「人間の身体はほとんどが水でできているのだから、
自分の手も水のようにならなくてはならない」
水は力ずくで岩を割りません。
しかし長い時間をかけて、岩に穴を開けます。
隙間があれば、そこに静かに入り込みます。
推拿の手技が届く深さは、
力の強さではなく、
術者の「水のような状態」によって決まります。
これは腹部按揉法に限らず、
推拿の手技全体に通じる原則です。
胃腸の不調、自律神経の乱れ、疲れが抜けない感覚——
そうした状態の背景に、
気の滞りや内臓機能の低下が関わっていることがあります。
「揉みほぐす」だけでは届かない場所に、推拿は届きます。
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すいな健康院 からだの調律整体 推拿の信長
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