🌸第5回|五臓の働きと心身のつながり

query_builder 2025/10/25
推拿(徒手•手技療法)に必要な中医学を学ぶ

🌸第5回|五臓の働きと心身のつながり


— 肝・心・脾・肺・腎・命門の生命的統合 —



【概要】


中医学では、身体をひとつの有機的な宇宙として捉え、

その中で「五臓(ごぞう)」が生命活動の中心的な役割を担うと考えます。


五臓とは、肝・心・脾・肺・腎 の五つの内臓機能を指し、

それぞれが単なる器官ではなく、

気血の循環・感情・感覚器・精神活動など、

心身全体のはたらきと深く結びついています。


蔵象学説の応用としての五臓理解は、

「体」と「こころ」が分離せず響き合う存在であることを示し、

推拿や養生の根本的な考え方となります。



🌿【要点まとめ】


•「五臓」とは、肝・心・脾・肺・腎を指し、命門を含めて全身を統合的に支える。

•それぞれの臓には、特定の感情・器官・要素が対応している。

•五臓は互いに助け合い(相生)・抑え合い(相剋)ながらバランスを保つ。

•推拿では、このバランスを整えることが「心身一如」の実践につながる。



🫀


五臓の基本構造


五臓とは、心・肝・脾・肺・腎 の五つ。

それぞれに対応する情緒や器官があります。


主な働き

関係する器官・感情

気血を巡らせ、情志を調える

目・筋・怒

血脈と精神活動の中心

顔・舌・喜

飲食物を気血に変え全身に運ぶ

口・肌肉・思

呼吸と水分代謝を司る

鼻・皮毛・憂

精を蔵し、生命力の根源

耳・骨・恐




1️⃣ 肝(かん)— 気血の流通・情志の調和・筋と目の健康


肝は「将軍の官」といわれ、全身の気血の流れを統率します。

気がのびやかに巡ることで、感情や思考もスムーズに働きます。

•肝の主な働き:疏泄(そせつ/気血をめぐらせる)、蔵血(血を蓄える)

•感情との関係:怒(いかり)

•関連する部位:筋・爪・目


肝の気が滞ると、イライラや肩こり、頭痛、目の充血が起こりやすくなります。

また、肝血が不足すると、筋のけいれん、爪の変色、月経不順などが現れます。


推拿では、肝経・胆経の流れを整えることで、

「気のめぐり」を回復させ、情志の調和を図ります。



2️⃣ 心(しん)— 血脈と精神意識活動の中心


心は「君主の官」と呼ばれ、

血液循環とともに精神活動のすべてを司ります。

•心の主な働き:血脈の運行、神志(精神活動)の統率

•感情との関係:喜(よろこび)

•関連する部位:舌・顔・脈


「心は神を蔵す」といわれ、

思考・記憶・感情の安定はすべて心の調和に由来します。

心が弱ると、不眠・動悸・不安感などが生じ、顔色もくすみがちになります。


推拿では、心包経や任脈を整えることで、

胸の気を開き、情緒を安定させ、深い呼吸と安らぎを取り戻します。



3️⃣ 脾(ひ)— 運化と統血・思慮との関係


脾は「後天の本」と呼ばれ、

飲食物を「気・血・津液」に変化させて全身に運ぶ中心です。

•脾の主な働き:運化(消化・吸収)、統血(血を内にとどめる)

•感情との関係:思(おもい)

•関連する部位:口・唇・肌肉


脾の働きが弱まると、倦怠感・食欲不振・下痢・出血傾向などが現れます。

また、考えすぎ・悩みすぎは脾気を滞らせ、胃腸の不調を招きやすくなります。


推拿では中焦部(胃・脾周辺)の按揉を中心に、

消化器の気血を調え、身体の中心軸を整えます。



4️⃣ 肺(はい)— 気の出入り・水の調節・皮毛の防衛


肺は「相傅の官(そうふのかん)」とされ、

心を補佐し、呼吸・気・水の運行をつかさどります。

•肺の主な働き:宣発(上に開く)、粛降(下に降ろす)、水道の調節

•感情との関係:憂(うれい)

•関連する部位:鼻・皮毛・喉


肺が弱ると、呼吸が浅く、咳・鼻づまり・皮膚の乾燥などが生じます。

また、悲しみや憂いが長引くと肺気が滞り、免疫力が低下します。


推拿では、胸郭と肩背部を解放して呼吸を深め、

全身の「気のめぐり」と「水の流れ」を調整します。



5️⃣ 腎(じん)— 精を蔵し生命力を司る・骨と耳・恐の感情との関係


腎は「先天の本」であり、生命の根源的なエネルギーを蓄えます。

成長・発育・生殖・老化・ホルモン調節など、

生命の土台すべてに関わる臓です。

•腎の主な働き:蔵精(生命力を蓄える)、納気(水と気の代謝)

•感情との関係:恐(おそれ)

•関連する部位:耳・骨・髪


腎が弱まると、耳鳴り・腰痛・足のだるさ・冷え・不安感などが現れます。


推拿では腰背部や足裏の経絡を整え、

「命の火」を温めることで(簡単にいうと命門や丹田などを滋養する)、根本的な活力を回復させます。



6️⃣ 命門(めいもん)— 生命の根本エネルギーとしての意義


命門は左右の腎のあいだにあり、

全身を温め、精気を燃やす「生命の炎」とされます。

•命門の主な働き:陽気を発する、精を温養する

•関連する部位:腰部・下丹田


命門の火が衰えると、手足の冷え、活力低下、無気力などが生じます。

推拿では、腰部・督脈を中心に「命門の火」を調整し、

心身の陽気を引き出します。



7️⃣ 【まとめ】五臓の相互関係と推拿・養生への応用


五臓はそれぞれが独立して働くのではなく、

互いに助け合い、抑え合うことで全体の調和を保っています。


このバランスを中医学では「相生・相剋(そうせい・そうこく)」と呼び、

推拿ではこの流れを「気の触覚」として捉え、

滞りを見つけ、通し、整える技術として実践します。


五臓が調えば、気血が巡り、

からだは軽やかに、こころは静かに。

人間本来の自然なリズムを取り戻すことができます。



📚【参考文献・出典】

『全訳 中医基礎理論』(たにぐち書店)


💠【免責事項】

本記事は中医学の理論的理解を目的とした要約であり、

診断・治療行為を目的とするものではありません。

実際の症状や施術に関しては、必ず専門家の指導のもとで行ってください。


🪷文責:すいな健康院 推拿療法 天と地と人 信長正義

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